当初の予定では、一日目で呉観光を終え、二日目に宮島に行き、その後広島駅近辺を散策の後、帰りの便(最終便の一本前)まで時間を潰す計画でした。
しかし、1日目で宮島に行ってしまったために、今日の予定は大和ミュージアム&鉄のくじら館しかなく、そこで1日を過ごすのは、私としては避けたいため、ホテルのコンシェルジュにアドバイスをお伺いしましたところ、呉から10分(高速船)or20分(フェリー)で行ける江田島に第1術科学校(旧海軍兵学校跡地)という海上自衛隊の学校があり、見学できると教えていただき、午前中はこちらに伺うことにしました。

ホテルをチェックアウトし、タクシーで昨日と同じ港へ。
たまたまフェリーの時間が合い、すぐ乗ることができました。

第一術科学校の見学は、予約も費用も必要なかったのですが、一日3〜4回程度の見学できる時間が決められており、その時間に集合して、係員の指示に従って見学します。
許可された場所以外は立入禁止で、見学の服装なども制限されています。

服装制限について、フェリーの中でサイトをチェックして気が付き、長男が短パンできてしまっていたので、「着替える必要がある」ことを伝えると、ものすごく不機嫌に・・・。ホテルで言ってくれればよかったのにとか言い出し、私「わかってたら言ってたし、そもそも君のために来てる」、長男「俺は戦艦に興味があるだけで自衛隊や戦争が好きなわけじゃない」等のやりとりがあり、瀬戸内海の小島で無駄に険悪ムードに・・・。
もはや何のためにわざわざ江田島に来ているのかわからなくなっている中、港からタクシーで第一術科学校に向かいます。長男はトイレの中で着替えるという行為が耐えられないそうで、じゃあ、タクシーの中で着替えれば?と言う私を、野蛮人を見るような目つきで見ていました。
生きる力が弱すぎますね。私なんてちょっとした建物の陰とかでも着替えられますよ(犯罪)。

術科学校の入り口で受付をして、見学者待合室に向かいます。
長男は待合室のトイレにて、長時間かけてどこにも触れずに着替えることに成功したらしいです。
私は、待合室で、自衛隊啓蒙ビデオを見て待っておりましたが、「海上自衛隊超かっこいい!」と思うまでには洗脳されました。高校の社会科見学などでここをルートに入れれば、何人かは自衛隊志望になりそうです。

時間になり、案内係の方の説明を伺いながら、見学します。
こちらは大講堂。身分の高い方しか正面入り口からは入れないそうで、平民の我々は裏口からはいります。

天井灯は舵輪をイメージしたものだそうで、美しいデザインですよね〜。

こちらが、赤レンガの幹部候補生学校です。暑い日でしたので、私自身はぐだぐだでしたが、こう、全体的に空気がぴーんと張り詰めているような感じがしました。

映画「るろうに剣心」や「坂の上の雲」のロケ地として利用され、この廊下を誰かが走るシーンがあったそうです。

軍艦大和主砲砲弾など。

こちらの脇に教育参考館というのがあり、見学はできますが、写真撮影は禁止です。学校の歴史の授業では飛ばされがちな戦前戦後の歴史の解像度が上がるような、著名な軍部の方々の展示物が多くあり、同行しているグループの方も皆熱心に観覧されていました。
特攻隊員の遺書が展示されている一角もあり、涙なくしては見れないもので、心がぐらぐらと揺さぶられ、苦しい気持ちになりました。
皆さん達筆で、恨み言や死を恐れる言葉はなく、国のために尽くしたいという気持ちと、両親への感謝の念などが綴られていました。お母さんが悲しむことが一番心配で、つらいことだが、自分はあくまでも幸せに散っていきますというような内容も多く、残された人のことを最後まで思いやっての言葉が心に沁みると同時に、これを書いた青年たちは現実に亡くなってしまったのだという救いの無さに、自分の気持ちの持って行き場がなく、今でも寝る前に考えたりしてしまいます。

小学生の修学旅行で広島の原爆資料館などに行くと、センシティブな児童はトラウマのようになってしまうことがあると聞きますが、私のように、惰性で生きてきたような人間も受け止める器がいまだに小さくてだめですね・・・。

だいたい私は普段からハッピーエンドとわかっている映画しか見ないようにしていますし、終わったのかどうかもわかりにくいフランス映画のようなニュアンスで押し切るのも苦手で、子供でもわかるようなハッピーエンドのバカ映画最高タイプです。太平洋戦争関係は、日本は敗戦国でもあり、悲しい最後がどうしても多くなるので目をそむけてきましたが、そういう意味では、この年にして、この地で意図せず平和教育を受けましたね。お気楽一泊旅行が平和学習社会科見学になってます。

日本はこの敗戦から這い上がり、経済的にも発展しましたが、今は下り坂。そして、世界はまだあちこちで戦争をしていますし、日本だって、いつ何があるかもわからない状況ですよ。なんとも言えない重苦しい気持ちになりつつ、参考館を後にしました。

長男に、特攻隊員の遺書を読んで、気持ちのもって行き場がないという話をしたところ、長男は今年の大学受験の際に、ある大学の小論文試験で「自分が特攻隊員になったつもりで家族への手紙を書け」というものがあったらしく、「自分が書いたものとだいたい同じような感じだったから、点はとれてるなと思った」とまさかの答えあわせ・・・という思いもよらない感想を抱いていました。

そしてまた最初の待合室に戻りまして見学は終了。すぐ横にある売店でのお土産購入タイムになりました。海上自衛隊グッズや海軍カレーなど、欲しい人には刺さりまくるここでしか購入できないグッズの宝庫です。

印象に残ったのは、こちらのご出身でもある、山本五十六海軍大将グッズが大量にあるということですね。

あの名言、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」の書かれたクリアファイル、色紙、ノート、Tシャツ、帽子、コップなど、五十六グッズが世界で一番充実しているのではないかと思われました。
私は、次男のお土産として五十六の「男の修行色紙」(苦しいこともあるだろう 云い難いこともあるだろう 不満なこともあるだろう 腹の立つこともあるだろう 泣き度いこともあるだろう これらをじっとこらえてゆくのが 男の修行である)を購入しようかと思ったのですが、長男から「「うっざ!」とか言われて即捨てられる様子がありありと想像できるのに、なんでそれを買おうと思うかな。そういうとこだよ!」と強く止められてやめました。
長男は五十六の「常在戦場」という言葉が書かれたサーモスの保冷タンブラーを私の持っていたお土産のかごに無造作に投入したのですが、Amazonなら700円のものが、「常在戦場」という文字があるだけで、3000円くらいしていて、まあ、そういう心持ち(常日頃から戦場にいるような緊張感を持って物事に臨めという心構え)でいられるなら安いものかと思ったのですが、帰宅後、そんな心持ちである様子は一切見られません。